2007年9月例会報告「ケータイ小説を読み比べる」&今月の3冊

 4月に赴任した学校ではケータイ小説が人気。利用者のこころを理解するためにも読まねば読まねばと思いつつ、最初の数ページで目が泳ぎだし、どうしても読めない状況を打破すべく、例会のテーマにしてくださいとお願いしました。
 読んでいるうちに一定の傾向があると感じられたので、そういった要素があるかどうかを一覧表にして、読んだ人の解説をもとに表を完成させる作業を行いながら進めました。(表がほしい方は事務局までご連絡下さい)

 話し合っているうちに、内容や表現の過激さを数直線で表せるのでは、という話になって作ったのが下の図。

ソフト←-------------------------------------------→過激
・『Line』・『天使がくれたもの』 ・『赤い糸』   ・『クリアネス』
 ・『もしもキミが。』 ・『teddybear』 ・『恋空』 ・『LOVE at Night』
    ・『また会いたくて』

 小・中学校でも「どうしてもケータイ小説入れて」といわれて、でもあまり過激なのはちょっと…という場合、『Line』や『もしもキミが。』を入れてみてはいかがでしょう。

以下に発言を列挙します。
 ひとくちにケータイ小説といってもいろいろあることがよくわかった。
読者層について
 ケータイ小説読者は実話系が好き。よくきかれるのは「これほんとのことですか?」
 生徒が口にする「リアル」には「現実社会(リアル)←→ファンタジー」「ノンフィクション(リアル)←→フィクション」のふたとおりの「リアル」がある感じがする。
 細かな描写から登場人物を想像する力が弱いので、ステレオタイプな人物のオンパレードになるのではないか。また、新たに人物と設定を思い描くのが面倒くさいので、続編や同じエピソードを別の登場人物の目から描くバージョン違い(『太陽と月』『君がくれたもの』『teddybear2 光』など)の需要があるのでは。
 読者にとっては、身近で等身大の人物しか登場しないので、台詞と事実の羅列が多く、心中の描写がほとんどないのではないか。
 ライトノベルの読者層とはほとんど重ならず、文体は明らかに異なる。
ケータイという媒体
 同じ横書きデジタル媒体でも、パソコン小説とケータイ小説は違うもの。内容の違いもあるが、「本」「パソコン」「ケータイ」という媒体の違いが与える影響は大きい。
 大半の若い読者にとっては一過性の流行なのでは。
 「本」や「読書」という枠からみるとアンバランスで特異な現象に見えるが、会員登録しないと見られなかったりする、ケータイをめぐる経済活動・文化の一端と考えれば分かりやすいし、見えてくるものがある。マーケティングや囲い込みなどに利用されていると思われる。
ケータイ小説と図書館
 学図研ニュースNo.258で、赤木かん子さんは「YAのことはYAに聞け」と、いっているが、YA向けのアンソロジーでけっこう歯ごたえのあるシリーズ(「あなたのための小さな物語」)を編集されている。どういう意図だろうか? →自分の好きなタイプの本を読む利用者にしか奉仕しない図書館員ではダメ、リアル系の子に求められる資料に目配りできるようにならなければと言いたいのでは。
 ケータイ小説の扱いや内容へのとまどいも、行き着くところは選書とリクエストの問題では? 新しいものが出るたびに図書館はどうすべきかと話題になる。(過去のX文庫など)今後もっともっと新しい形態の「物語」が出てくるだろう。

参考文献 「ダ・ヴィンチ」2007.7月号
「本の雑誌」2007.6月号
「学図研ニュース」2007.8月号 赤木・金原対談






今月の3冊
 ケータイ小説の中でも両極端な2冊と、異色の一冊を選んでみました。こうしてみるとけっこう個性豊かです。

書名『Line』 掲載サイト 魔法のiらんど
著者 Chaco 出版社 スターツ出版 出版年 2006.02 本体価格 1050円
 実話がもとになっているというふれこみの『天使がくれたもの』の主人公、舞の中学時代を描く、純情な中学生の恋愛もの。互いの思いが伝わるかどうかひたすらやきもきし、ようやく伝わっても友だちのからかいで気まずくなってしまうというただそれだけのストーリー。安心してどなた様にもすすめられます。ケータイ小説というだけでひとくくりに過激!というのは間違っていると認識しました。

書名『クリアネス』 掲載サイト 魔法のiらんど
著者 十和 出版社 スターツ出版 出版年 2007.02 値段 1050円
 恋人がいながら売春をしている大学生のさくらと、複雑な生い立ちの出張ホスト「レオ」の物語。どう考えても不自然なストーリーに加え、法的・倫理的に問題があったりきわどい描写があったりで、いわゆるケータイ小説のイメージどおり。「第1回日本ケータイ小説大賞 大賞作品」だそうです。起伏の激しいエピソード・過激な描写こそが、愛の強さを裏打ちしてくれるという一種のインフレーションを感じます。

書名『スウィートスウィートバスルーム』 掲載サイト フォレストノベル
著者 碧色ボタン 出版社 マガジンハウス 出版年 2007.5 本体価格 1000円
 突然風呂場に出現した女の幽霊と、その家に住む男のラブストーリー。過激なシーンはまったく無く、「ケータイ小説」というより「携帯小説」と呼んでほしいみたいです。
 なぜ、幽霊が風呂場に出現したのか、なぜ、風呂場から一歩も出られないのか(後に本人の努力によって克服されてしまう。…あれ?)主人公の男性にあこがれる少女との関係はどうなるのか(いつの間にか影が薄くなってしまう)うさんくさい霊能者が出てきても誰も疑わないのはなぜか(というよりこの人が出てこなければ進まなかったかも)つっこみどころは満載だけれど、大人が眉をひそめるケータイ小説ではないことは確かです。
 …それにしても、ケータイ小説を書籍化するときに添削ってしないのかな?


(文責AT)

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