パスファインダーづくりを始める前に

長野支部がパスファインダーの分科会を担当する今夏の全国大会に向けて、例会では継続的にパスファインダーについての研究を続けています。より多くの方にパスファインダーについて考えていただくために、篠原さんに書いていただいた原稿を再掲します。2004年8月に執筆・『しなのがくと』の2004年9月号に掲載したものです。




はじめに

「パスファインダーって,聞いたことはあるけど一体どんなものなの?」と思う方は多いのではないでしょうか。かくいう私もそうでした。

昨年長野支部で“学校図書館の授業支援”をとりあげるというので,利用教育に関係ある語として少し調べてみました。そうしたら,図書館で調べものをするときに役に立つツールになりそうです。それでさっそく司書教諭科目「学習指導と学校図書館」の受講生にもつくってもらいました。

とはいえ,私自身まだ充分理解しているわけではありません。また,どのくらい有効性があるのか,あるいは,どうすれば有効なツールになるのか,実際にいろいろ作って利用者の反応をみながら検討していく必要があります。

今年1年(あるいは来年も?)長野支部ではパスファインダーについて本格的にとりくむことになりました。そんなことから,本稿で露払いの役をつとめさせていただきます。



パスファインダーって何?

 「pathfinder」という語の元々の意味は,「開拓者」とか「探検者」ですが,図書館用語としては“道案内”というような意味がふさわしいでしょう(日本で積極的にパスファインダー作りをすすめている私立大学図書館協会のグループは「みちしるべ」という言葉をあてています)。特定のトピックに関する資料や情報を掲載した資料リストですが,調べる手順を考慮して作成されているところに特徴があります。

 実際にどう定義されているか,表1に紹介しました。これらの定義や説明を総合して考えると,次のようにまとめることができます。

・図書館が提供する情報サービスのひとつ。
・特定のトピックを扱う。
・情報検索を進めていくうえでの道案内となるもの(調べるためのプロセスを提示する。ナビゲーターの役割)
・提示するものは,図書資料,視聴覚資料,デジタル資料等,また所在情報も含めて扱う。
・従来はリーフレットで提供されていたようだが,現在はWeb上で利用できるようになっている。


なぜパスファインダーなの?

 今までも授業支援の際,参考になる資料をリストにして配布することがあったと思います。パスファインダーがそういうリストと異なるのは,資料を網羅的に載せないこと,個人が調査をすすめていくプロセスを考えて作成することです。そのため,個人がパスファインダーを道案内にして自力で資料を収集することが期待されています(無論これはレファレンスに依頼することを否定するものではありません)。

またWeb資料を積極的に導入することがあげられます。近年とみにWeb資料が豊富になってきましたが,逆に情報が多すぎてどこに有用なサイトがあるのか見つけにくくなっています。その意味でも役に立つ情報源を整理して紹介する意義は大きいでしょう。

それからもう一点,今までのリストとの違いとして,コンピュータ上で公開すること(必ずしもWeb上で公開することを意味していません)のメリットを指摘したいと思います。URLをクリックすれば,そのまま情報にたどりつける簡便さがあります。



パスファインダーの見本は?

国内のWebサイトで見られるものはまだ多くありません。最近検索したところ北海道の北広島市立図書館のサイトに掲載されていました(http://www.lib.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/lib)。プレゼンテーション用のソフト,パワーポイントを使って,図書館の利用方法の説明も加えながら手順をふんで調べられるよう工夫されています。これがいわゆるチュートリアルだなと納得できるような方法です。

そのほかは,いずれも大学ですが,①私立大学図書館協会東地区部会研究企画広報研究分科会 http://www.jaspul.org/e-kenkyu/kikaku/pfb/index.htm ②愛知淑徳大学図書館 http://www2.aasa.ac.jp/org/lib/③東京学芸大学図書館E-TOPIA  http://library.u-gakugei.ac.jp/ があります。

神奈川支部の学校司書・有吉末充さんらは日本図書館協会の利用教育委員会で「図書館利用教育ガイドライン」を作成する際,パスファインダーについて取り組まれたようです(「高等学校図書館でのパスファインダー共有の研究」など『利用教育委員会通信』No.51,2002.3,未見)

アメリカのWebサイトでは公共図書館,学校図書館,大学図書館などの例を見ることができます(google検索で「pathfinder」でも検出できますが,是非「pathfinders」でも検索してみてください)。たとえば,ワシントン州ウェナッチー学校区にあるニューベリー小学校では,4・5年生向けには「アメリカ革命」「色と光」「50州」「生存危険な動物たち」など11トピックス用意されています。また同じ学校区にあるオーチャド中等学校では,「古代エジプト」「植民地」「家系」「ルイスとクラーク」のトピックが掲載されています。

ウェナッチー学校区のサイトには,パスファインダーの作り方も掲載されています。それによると,伝統的なパスファインダーの内容は,「導入」「キーワード,件名標目」「デューイの番号(請求記号)」「印刷物-図書,逐次刊行物」「非印刷物-ビデオ,CD-ROM」「インターネット-Webサイト」だということです。

そういわれれば,この形式になっているものは多いなと思います(日本のサイトでは,①の私大協のものがこの形式です)。ただし,全部がそうだとは限りません。③の学芸大のように,ほとんどリンク集のような体裁になっているものもあります。



パスファインダーのつくり方

パスファインダーのつくり方は,上記の学校区のサイト(http://home.wsd.wednet.edu/WSD/learnteach/index.html)のほかに,「児童・ヤングアダルトのためのパスファインダーをデザインする」(http://www.eduscapes.com/earth/path3.html)などもあります。

先に紹介した私大協は,会員の図書館が作成したパスファンダーを持ち寄ってパスファインダーバンクをつくる試みをしていますので,つくり方といっしょに雛型も公開しています。大学図書館のパスファインダーをそのまま小・中・高の学校図書館に利用できるかどうかはわかりませんが,とりあえずはこういったものを参考にして作成していけばよいと思います。



利用教育とパスファインダー

パスファインダーの意義として,利用教育の側面から“図書館利用者が自立的に資料を検索するため”というようなことを読んだことがあります。昨年講義で取り上げたときは,そのつもりで,調べる過程を大事にしたものを構想しました。しかし実際に学生さんたちと一緒にパスファインダーをつくってみて,あまりていねいな道筋をつくるのはかえってよくないのではないかと思うようになりました。

自分自身が調べ物を体験するとわかると思いますが,最初に調査の筋道を立てていたとしても,なかなかそのとおりにはいきません。調べている途中でさらに興味あるものに出合い,最初のテーマからずれていくということはしばしばあります。また,調べるおもしろさは,そういう意外性のある点にもあります。調べる人の主体性を大事にするのなら,でしゃばり過ぎないように気をつけるのも大事なことでしょう。そうしてみると,「調べる過程を考慮する」ということがどういうことなのか,もう少し考えてみる必要がありそうです。



おまけにおまけのはなし

私たちはブックトークを演じるために,紹介できる手持ちの図書を増やす努力をしてきました。また自分や他人のブックトークの実演を通して,実際に資料に強くなった面があると思います。同じようにパスファインダーづくりを通しても,調べるための資料や調べ方に強くなるという副産物が得られることと思います。



【参考資料】

□伊藤 民雄「IT講座:インターネットと情報(第7回)ウェブ情報の検索:情報源の効率的な探索」『情報管理』44(9),2001.12.

□鹿島みづき;山口純代「投稿:図書館パスファインダ-に見る次世代図書館の可能性」『情報の科学と技術』52(10),2002,p526~537.

□河上純子;仲尾正司;仁上幸治(他)「パスファインダ-バンクの実用化に向けて――Web版共同利用ナビゲ-ションシステム開発計画案(2001年度私立大学図書館協会東地区部会 館長会・研究講演会、研究分科会報告大会記録――研究分科会報告大会)」『私立大学図書館協会会報』118,2002.11,p183~188.

□村田 輝 ; 山崎 みどり ; 徳永 結美 他「教育情報案内パスファインダーによるレファレンスサービスのWebへの展開--東京学芸大学附属図書館における教育情報ポータルサイト"E-TOPIA" (国際学術コミュニケーション特集)」『大学図書館研究』67,2003.3,p37~49.

□三輪眞木子『情報検索のスキル:未知の問題をどう解くか』中央公論社,2003.9.

◇Webサイトの最終アクセスはいずれも2004.8.28.

表1 パスファインダーの定義・用語解説例

1)日本図書館協会図書館利用教育委員会編「図書館利用教育ガイドライン 学校図書館(高等学校)版」日本図書館協会,2001.p.32

ある主題に関する資料・情報を収集する際に,関連資料の探索法を一覧できるリーフレットのこと。網羅的な文献リストや一般的なガイドブックと異なり,あくまで具体的,限定的な主題に対する探索法を簡便に示すことを狙った道案内である。最近はデータベース形態で提供されるものもある。 

2)私立大学図書館協会東地区部会研究企画広報研究分科会 http://www.jaspul.org/e-kenkyu/kikaku/pfb/pfb_11.htm

・ある特定のトピックに関する資料や情報を収集する手順を簡便にまとめた情報探索ツール

・「俳句の関する資料の探し方」「社会学文献探索ガイド」など図書館利用者のニーズに合わせた具体的なトピックごとに作成され,レファレンスやガイダンスで活用できる利用者教育ツールです。

・従来はリーフレット形態で作成されることが多かったのですが,現在はその形態が紙媒体からWebへと広がりを見せています。

※ このページには,「パスファインダーの4つの条件」「パスファインダーにあてはまらないもの(一例)」の項もあり,参考になります。

3)ODLIS: Online Dictionary of Library and Information Science by Joan M. Reitz;図書館情報学オンライン辞典(http://lu.com/odlis/)(最近図書として発刊。Western Connecticut State UniversityのWebサイトhttp://www.wcsu.edu/library/odlis.html#Pより移動)

特定の話題や,ある分野や科目で課題にされた話題を調査する過程で,利用者を導くようにデザインされた主題文献目録。通常最適のツールを見つけられるように,組織的に一歩一歩進めるように図書館が提示する。パスファインダーは,印刷されたりオンラインで提供されたりする。トピカルガイドを見よ。

(トピカルガイド;事項手引;特定の事項を文献調査する際,調査する人に,最善の書誌ツールや情報源を印刷やオンラインのリスト,あるいは説明書きで提供したもの。もっとも望ましい形で利用されるよう一連の流れを提示する。パスファインダーとして知られている)

4)Golden Gate Seminary Library(http://ggbts.edu/lib2/pathfinder.htm)

図書館パスファインダーは,特定のトピックに関する様々なタイプの情報源や資料を組織化している導入のためのチェックリストである。それぞれは,文献検索の初歩の段階から図書館利用者を援助するようデザインされている。パスファインダーは,なじみのない主題や一般的な知識しかない主題について,組織的に資料のありかを提示することで利用者の時間を節約するために構築されるものである。主題の文献やアウトラインに対する複雑な書誌を提供するような徹底的なガイドとしてデザインされるべきでははない。

5)その他  丸本郁子、椎葉もと子『大学図書館の利用者教育』日本図書館協会,1989,p110-115 など

(篠原 由美子)

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